株式会社BULL
杉野健二さん(機械・機構設計) 48歳
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希望退職を機に24年勤めた会社を離れ、栃木で宇宙開発に挑む。
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新卒で入社した会社に24年勤め、自動車用エアコンのコンプレッサー(圧縮機)の設計に携わってきた杉野さん。希望退職の募集を機に転職を決意し、両親の年齢も考えて当初は地元・北海道へ戻る道も検討していたという。
そんな杉野さんが選んだのは、栃木県宇都宮市の株式会社BULL。役目を終えた人工衛星などの部品が、宇宙ごみとして残るのを防ぐ装置「HORN(ホーン)」を開発するスタートアップ企業だった。
異業界でも担当する装置は前職で手がけた製品と同じくらいの大きさ。これまで培った設計経験が活かせると考え、宇都宮で宇宙に関わる装置の設計に挑んだ杉野さんに、転職を決めた経緯と仕事や暮らしの変化について聞いた。
※本記事の内容は、2026年10月取材時点の情報に基づき構成しています。
- 過去の
転職回数 - 0回
- 活動期間
- エントリーから内定まで66日間
転職前
- 業種
- 自動車・輸送機器(メーカー)
- 職種
- 機械・機構設計
- 業務内容
- 自動車用エアコン向けコンプレッサーの機構設計を担当。構造・音響のシミュレーション解析や、新方式コンプレッサーの開発にも従事。
転職後
- 業種
- 宇宙開発(宇宙デブリ化防止装置の開発)
- 職種
- 機械・機構設計
- 業務内容
- 宇宙デブリ化防止装置の機構設計を担当。全体レイアウトの設計に加え、衝撃試験・振動試験・展開試験にも参加。
40代後半での転職。自動車部品の設計経験を、栃木の宇宙開発で活かす。
現在のお仕事はどんな内容ですか?
2025年9月に入社し、人工衛星などが宇宙ごみ(デブリ)として長く残るのを防ぐ装置「HORN-10s」の設計を担当しています。役目を終えた人工衛星やロケットの部品を、地球の大気圏へ落としやすくするための装置です。
装置は宇宙で膜を広げる仕組みで、その大きさによって複数のモデルがあります。私が担当するのは、そのなかで最も小さい、人工衛星向けのモデルです。社外のメンバーも含めた少人数のチームで部品の配置や動く仕組みを設計しています。
設計だけでなく、衝撃や振動に耐えられるかを確かめる試験にも参加します。装置が膜を広げる一連の動作を確認する総合試験にはチーム全員で取り組んでいます。
入社前のご経歴を教えてください。
大学で機械工学を学び、2001年に群馬県に事業所のある自動車用エアコンや冷凍ショーケースなどを手がけているメーカーへ入社しました。
入社1年目は大阪で9カ月の営業実習を経験し、工場実習では自動販売機の組み立てや冷凍ショーケースの配線に携わりました。その後は自動車用エアコンに使われるコンプレッサー(圧縮機)を担当し、実験部門で2〜3年働いてから設計へ移りました。そこから20年以上、機構設計に携わってきました。
転職のきっかけは?
会社が希望退職を募集したことがきっかけです。資本関係や事業の方針が変わるなかで、24年勤めた自分も、この機会に別の会社で働こうと考えて応募しました。
両親も年齢を重ねていたので、北海道に帰りたいという想いもありました。次の仕事でもこれまでの設計経験を活かしたいと考え、北海道の企業も含めて転職先を探し始めました。
転職活動はどのように進めましたか?
希望退職だったため、まずは会社が用意した再就職支援サービスを利用しました。自分でも地元・北海道の企業を中心にホームページで調べたり、合同企業説明会に参加したりして探していましたが、同じような条件であれば若手が選ばれるのだろうと感じる場面もあり、「当たり前の話だな」と冷静に受け止めていました。
そうしたなかで、支援サービスの提携先であったリージョナルキャリア栃木(運営:リージョンズ株式会社)のコンサルタントから声をかけていただき、提案・紹介されたのがBULLでした。
自分がこれまで設計してきた部品と担当する装置の「サイズ感が近い」こともあって、選考ではこれまでの設計経験を高く評価してもらえました。
今の会社に決めたポイントは?
他社の求人も見るなかで、BULLに決めた理由は二つあります。一つ目は、選考の圧倒的なスピード感です。最終面接と会社見学を1日で受け、その場で内定を伝えられました。その帰り道には不動産会社へ寄り、宇都宮で住まいを探し始めていたほどです。
もう一つは、これまでの設計経験がそのまま活かせると確信できたことです。担当する人工衛星向けの装置は、前職で設計していた自動車用エアコンのコンプレッサーとほぼ同じサイズ感でした。宇宙という未経験の分野であっても、これまでと近い感覚で設計できると考えました。
ちなみに、スタートアップ企業という規模に対する不安はありませんでした。前職で希望退職を経験したこともあり、「大きな会社だからといって絶対に安泰ではない」と身をもって知っていたからです。
設計から実験まで関わる仕事。宇宙分野の知識は入社後に学ぶ。
転職していかがですか?
入社前から、設計だけでなく実験にも一通り関わる仕事だと理解していましたし、仕事の進め方を細かく想像していたわけではないので、大きなギャップはありませんでした。
ただ、宇宙分野ならではの設計ルールや試験規格は知らなかったので、入社後に学んでいます。まずはJAXAが公開している標準ハンドブックを読み、宇宙開発の基本となる知識を確認することから始めました。
また、宇宙で広げる膜を装置の中に小さく収納する方法にもいくつかの「流派」があり、大学ごとにアプローチが異なることも、入社してから知った面白さの一つです。
転職して良かったと思うことは?
設計に加えて実験や部品の組み立てにも関わっていますが、ずっと座って設計をするより、時には手を動かす働き方が自分には合っていますし、やりがいを感じています。
宇宙には以前から興味があり、展示を見に行ったりロケットの打ち上げ中継を見たりしていました。あくまで趣味で、仕事にするとは考えていませんでしたが、今はその分野で装置づくりに携われていることを嬉しく思います。
困っていることや課題はありますか?
自分の設計を進めたい一方で、現場での実験や他チームのサポートにも入るため、マルチタスクの難しさを感じています。一つの作業に集中すると別の作業が止まってしまうのが現状の課題です。
会社としては増員を進めている最中です。最初から即戦力のベテランでなくても、教え合いながら一緒に仕事を進められる仲間が増えていくと嬉しいですね。
生活面の変化はありましたか?
群馬県から宇都宮市へ移住し、車で通勤しています。朝6時半に起き、10分ほどの道のりを運転して通う生活で、9時には会社に全員が集まっています。
夏は群馬にいたころよりも涼しく感じますね。仕事帰りは車なので会社近辺で食事をする機会は少ないですが、会社の懇親会でもんじゃ焼き店へ行ったり、買ってきたスイカをみんなで分け合ったりと、和やかに過ごしています。
転職を考えている人にアドバイスをお願いします。
私自身、希望退職を機に「そろそろ新しい挑戦をするタイミングか」と24年勤めた会社を出る決断をしました。選考で「年齢の壁」を感じる場面もありましたが、若手と同じ土俵で競うのではなく、自分が培ってきた技術や感覚がピンポイントで活きる場所を見つけることが大切だと感じています。
会社の規模やネームバリューにとらわれず、「自分の経験が活きるか」「手触り感を持ってワクワクできる仕事か」を大切にすることで、未知の業界であっても活躍の道は広がります。これまでのキャリアで得た自分の強みをとらえ直すことが、納得のいく次のステップにつながるはずです。